私には命の恩人が2人います。
一人目は甥っ子。
今から20年前、私は全てを失いました。いや捨てました。
人としての何もかも。
自分から捨てた。
「もう意味ないや」そう思ったから。
絶望した人生に。
これで今までは報われると思ったのに、我慢して頑張ってきて良かったと思えるはずだったのに。
なのに、救いなんてやっぱり無かったと思った出来事が起こる。
もう頑張る必要もなかった、生きることに。
なのに生きてたんです。
命を捨てきれなかった、そのこと自体に恥を感じた、みっともない。
と思い?気づき?なお自分を責め続け地獄に落ち廃人と化す。
とにかく過去を消し去り、無いものとし、
感情も麻痺させ、抑圧し、閉じ込め、感じなくさせた。
(これはずっとそうだったから、ブレーキを外しただけかも)
亡き者にしたかった、自分という存在を。
自分で捨て、その現実を受け入れられず、自分を責め、本当に壊れた。
みっともない、無力なその姿。
世間からも切り離され、孤立し、孤独。
ゆえに地獄は続いた、自分だけの世界で。(それに逃げてたとも言う)
そんななか生まれてはいたんです、彼は。
私が記憶を失う前に、そう1番傷つき壊れる手前に生まれてた。
最後に会った人とも言うのかもしれない。
彼にかけた言葉は
「よく生まれてきたよね、こんな世界に、まぁでも頑張って、生まれたならもうしょうがないから。でも私の事は覚えなくていい」
消えたかった頃の自分が心の中でそう言った。生後1か月に満たない赤ちゃんに。
なんて残酷な言葉かけでしょうね。
本当に20年前(正確には19年か)から5年間ほとんどの事は覚えてない。
でも甥っ子との時間だけは、その記憶を頼りに思い出せるだけ。
他の事は今でもほぼ分からない。
どうやって暑さ寒さをしのいだのか、食料は、何してたのか、全部感じてないから分からない。
でも甥っ子は懐いた。
名前など5歳くらいまで呼んだことはない。
なのに一心不乱に見境なく懐いた。
意味不明なくらいひたすらに。
生後2.3か月くらいだろうか、あれは。
私に子どもを私に託し、なぜか妹は買い物かなんかに出て、2人で留守番。
寝てた、起きる、ミルク飲ませる、抱っこ、ゲップさせる。
落ち着く、じっと見る私を。ずっと...ずっと。泣かない。
ひたすら見つめる。
あの瞳は何だったんだろうか?
とても信じきっていた、自分を守ってくれると。
なぜ私にそう思える?
どうしてそこまで強く信じれる?人を?
弱いから、守ってもらわないといけないから、赤ちゃんはそうしないと生きれない。
そんな言葉は聞くが、だから可愛く思えるような存在として在る。
愛されるために、人の本能だ。
当時の私はそんなまともな感覚とは別次元の生き物だったのに。
でもそこから始まった私の再生は。
気づくのは、5年後。
事あるたびに私を求める、会いに来る、私を探す。
一緒に何かをしたがる。
たったの1度しか抱っこしてないのに、妹の友人に抱かせるため離すとすぐ泣く。
母は何度も抱っこしてるのに。なぜ泣く?そして私に戻る、そんな妹の披露宴。
結局帰りのバスまでずっと抱っこする。私は酔って寝てたのに泣かずに同じように寝てた。よく落とさなかったなw
階段を登れるようになる、上り、部屋のドアを開ける。
まるで「来たよ」と挨拶するように。
私はすぐに降ろす、何も言わず。自分だけの世界の住人だったから、他人は邪魔。
そんな仕打ちなのに、毎回来るわけ。
続く、続く、懲りずに何度でも。
そうして喋るようになる。
そうすると気遣いを見せだす。
玄関先で「もう帰るから、部屋に居ていいよ」って大声で言って。
そのうち自我を本格的に持ちだす。
当たり前のようにドアを開け「来たよ~」って笑う。
すぐ1階に降ろされるのが分かってても、必ず。
何か持ってて上ってきてて、それを手離さないと一人で降りられないからと、それを渡せと手を差し出すと抱っこしてくれると思い大きく手を伸ばす。無心に抱っこしてくれると信じて。
降ろしてもいつも結局すぐ上ってくる。
「何してるの?」「ここが楽しい」など…「あのね~昨日ね~」と話し出す。
私は放置するだけ、それでも来る。笑いながら。
何度も何度も名前を呼びかけ続けられる。
来ると足にしがみつく。「会いたかった~心の友よ~」なんて訳わからないこと言いながら。
どこで覚えた?そんな言葉w
とにかく私と遊びたいと妹にせがみ、ちょくちょく来る。
遊びは戦いごっこ、ただ新聞丸めた棒でたたき合い。
ひたすら叩かれるだけ(こっち大人だし)、おでこ真っ赤、でものぼせ状態でずっと笑ってる。
これ実はかなり痛いから、ちょっとおかしいって。なぜ楽しい?
初めてのお留守番。(自我芽生えてね)
ママ居なくても、私となら大丈夫かもと思ったらしい。
(正確には何度かあるよ、2人で留守番w)
他にも、山ほど彼は壁を乗り越えるときは私となら頑張れると思うのだった。
いくつになっても。
いつしか頼られる、信じてもらえる、そんな自分を少し信じだす。
生きてていいのかな?存在してて大丈夫かな?
生きる意味などずっとない。でも死んだらこの子は悲しむのかな?じゃあ...
それが生きる意味になってしまった。今も変わらず。
あの瞳は何だったのか?何を伝えていたのか?
何を受け取った?感じた?
私は「愛される」ということを甥っ子に教えてもらった。
赤ちゃんの人を信じる力って凄いですね。
それは持って生まれた強い力。
人間なら誰だって生まれたときは持ってたはずなんですよね。
信じる力を。
命の恩人(甥っ子)

コメント